家計節約の為の家庭菜園
「手間がかからない野菜」の対極に「手間がかかる野菜」があります。
家庭菜園はそもそも農業としてやるわけではありませんから栽培した野菜を売るわけではありません。
たくさん作っても近所におすそ分けしたり、親戚や友人に配る程度で利益は関係なくしている場合があります。
もちろん、直接的な金銭の授受がなくても、おすそ分けする事でコミュニケーションを深める事もできるし、お付き合いがスムーズになったりと、プラスになる面は多々あると思います。
また、本当に熱心な方は手間隙惜しんで情熱を注いでそれこそ商品としても可笑しくないほどの品質の素晴らしい野菜を作る方もいます。
そうした家庭菜園は趣味の側面もありますから採算がとれなくてもあまり気にしない事も事実です。
家庭菜園はもちろんそうした趣味の側面がある事も事実ですが、現在の家庭菜園ブームはそれに加えて家計を節約するために野菜を作り始めた方も相当数います。
スーパーでいつもお金を出して買っていた野菜が自分の家庭菜園でタダで手に入ればこれほど嬉しい事はありません。
もちろん肥料代、種代などのコストはかかりますが、それを差し引いてもほとんどは店で買うより安上がりになる事は間違いありません。
さて、こうして家計節約のために家庭菜園を営んでいるとしたら、やはりコストパフォーマンスには気を配らなければなりません。
すなわち、どれだけのコストで野菜が作れるかということです。コストは肥料代、種代、苗代、園芸資材などの代金がありますが、当然労働量・労働時間も計算する必要があります。
ある野菜1個を作るためにどれだけの金を使って、どれだけの労働をしたかが重要なのです。
そこで家庭菜園でも「手間がかからない野菜」を作る事が大切になってくるのですが、そこで逆に「手間がかかる野菜」を知っておく事も重要になります。
「手間がかかる野菜」を十分理解しておく事で、いかにより効率的に野菜を作るかがみえてくるのです。
手間がかかる野菜
では「手間がかかる野菜」とは一体どんな野菜でしょうか。「手間がかからない野菜」のコラムでも申し上げましたが、一般的には土の上で育つ野菜です。
つまり、実の部分もしくは葉のような食べる部分が土の上、空気中でむき出しになっている野菜です。なにやら意味不明の事をいっていると首を傾げる方もいるかもしれませんが、大雑把に根菜類以外と思って頂ければ良いのではないでしょうか。
根菜類は野菜の中でも手間がかからない野菜である事は間違いありません。それは風雨、気温などの天候、そして虫の害に侵される心配がないからです。
土の中は温度もほとんど一定ですし、栄養も水分もあります。青虫などに食われる心配もありません。
はじめに土作りさえしっかりしておけば、あとは台風で土壌が根こそぎ流されるなど、よほどの事がない限り安心安全な環境なのです。
一方、土の上の地上部で育つ野菜には過酷な環境が待っています。
台風で茎が折れる場合もあるし、連日の猛暑で葉が傷んでしまう事もあるし、青虫が実やら葉をいくらでも食べてしまいます。
家庭菜園ともなれば好んで消毒をする方も少なく、なるべく安心安全のため無農薬で栽培という方も多いでしょうから、害虫はのさばり放題ともいえます。
「ふじやま」さんの家庭菜園でも一切農薬は使用しませんので、害虫はとても駆除しきれません。
別に売るわけではないので多少形が悪くても味が良ければよいと考えています。話はそれましたが、要は土の上で育つ以上は害虫は避けてはとおれないのです。
また、最近は年々温暖化の影響で毎年毎年気温が上昇してきています。
「あついぞ熊谷」とまではいきませんが、「ふじやま」さんの家庭菜園がある冨士山麓でも夏は35℃以上の気温が連日続く事も当たり前になってきました。
真夏の猛暑というより酷暑といえる気温の中、1週間以上雨が1滴も降らない事も珍しくなく、野菜にとってはまさに過酷な環境です。
なすやピーマンなど夏野菜と呼ばれる野菜を作っていても年々の環境の変化は野菜作りには厳しくなってきている気がします。
こうして害虫や天候の影響を受ける地上部での野菜栽培は本当に困難であり、こうした環境の中で品質の良い野菜を作る事はまさに「手間がかかる」のです。
さて、それでは実際にどんな野菜がより「手間がかかる」のか、紹介してみましょう。
トマト
「ふじやま」さんが知る限りでは「トマト」が最も手間がかかる野菜ではないでしょうか。トマトほど手間がかかる野菜はなく、極端な話、手をかけなければ1個も収穫する事ができないといっても過言ではありません。
トマトは栽培が難しい野菜で、特に雨に弱いのが難点です。家庭菜園のテレビ番組や書籍でも必ずといってよいほど雨よけの設置を紹介しており、雨よけがなければ納得する収穫は望めません。
「ふじやま」さんの家庭菜園ではホームセンターで市販されているような立派な雨よけではなく、ポリ袋を作った自作の雨除けを使用しています。
強度はそれなりにあり、台風でも耐える事ができる代物ですが、何といっても設置が面倒です。最初からホームセンターでトマト用の雨除けを購入すればよいのでが、安いものでも4,000円から5,000円程度はします。
毎年大事に使えば元は取れるのかもしれませんが、家庭菜園の規模でそれだけの金額に見合う収穫があるのか疑問になり、今まで購入を控えていた次第です。しかし、設置の手間を考えれば結構面倒ですから、購入した方が良いのかもしれません。
トマトは元々は南米高地原産の野菜で、古代のマチュピチュ遺跡があるような場所で栽培されていました。そこでは年間を通して降水量が少なく、日本の様な雨季はありません。
日本ではトマトは冬には枯れてしまうので1年毎の栽培ですが、南米では日本のような寒さはないので年を越えて成長し、何メートルも伸びているのです。
もともとはそうした少雨地での高地栽培の野菜ですから、雨は天敵なのです。
もちろん、トマト自体はみずみずしく水分がありますので、水分が必要ないというわけではありません。
水分が少なくても構わないのですが、根っこからは水分を吸収する必要があります。
基本的には日照りが続いても大丈夫なのですが、真夏の猛暑時にあまりに乾燥が続くようなら根元に水遣りする事も必要となります。
さて、雨除け専用の園芸資材を用意したとしても、トマトの栽培は手間がかかることには変わりありません。
トマト栽培の最大の敵は雨で、いかに雨を避けるかが成功を左右します。
雨がトマトの花に当たれば落花する事が多く、実がつかなくなってしまいます。
梅雨の時期に雨が長引けば下手をすれば全ての花が落ちてしまいます。
そんな訳で特に梅雨の時期は注意が必要で、あまりに雨が酷ければ全く収穫にならないということもあります。
土をしっかり耕して肥料を十分施し、ビニールを敷いて苗をうえつけ、支柱を立てて誘引し、成長に応じてわき芽取りを欠かさず行ってと、トマト栽培にはやる事が山ほどあります。
梅雨の時期にはすでにかなりの手間をかけて生育していますから、長雨で花が落ちてしまうような事になればせっかくの苦労が水の泡になってしまいます。
仮に花が落ちてしまってもその後晴天が続けば節ごとにまた花は咲いてきますが、どうしても収穫量は落ちてしまいます。
雨よけを設置しても高さがありますから茎が伸びすぎても困ってしまいます。
また、トマトの実は虫に食われる事も多く、大きくなる前に虫に食われてしまえばせっかくの実が傷んで駄目になってしまいます。
このようにトマト栽培は困難の連続であり、大変な手間をかけなければ作る事ができない野菜です。
もちろん、手間をかければかけただけの素晴らしいトマトを収穫できるのですが、果たして家庭菜園で誰しもそれだけの手間がかけられるかは難しいところです。
ナス
トマトの次に手間がかかる野菜といえば、ナスではないでしょうか。
「ふじやま」さんの経験ではナス栽培の難しさはやはり害虫と水分によるものだと思います。
ナスは苗から植付けするのが通常ですが、特に植付け初期は葉が小さい為に、害虫に葉が食べられてしまうと再起不能になってしまいます。
葉が2、3枚しかないにも関わらず1枚、2枚丸ごと食べられてしまう事もあり、十分な害虫対策をしないとまともに成長できません。「ふじやま」さんの家庭菜園では植付け初期には必ず周囲をポリ袋等の風除け・虫除けを設置し、害虫の侵入を防いでいます。
それでも株が大きくなればポリ袋も外さなければなりませんので、以後は完全に無防備になってしまいます。
4月、5月に植えつけて初収穫の目安となる6月頃までは、虫の害も少なく無事に育ちますが、暑くなってくる7月、8月は虫が大発生します。
そこではやはり無農薬栽培なので虫を駆除する事もままならず、酷いときには株についているほとんどの葉を食べられてしまう事もあります。
葉が食べられてしまえば、株も実も成長する事ができなくなり、結局収穫量が落ちてしまうというわけです。
さらに、ナスは水野菜といわれるほど栽培に水分が欠かせない野菜です。
ナスには水ナスと呼ばれるものもあり、昔は農家さんが畑で喉を潤す為にみずみずしい水ナスを食べたほどです。
初収穫の時期となる梅雨の時期は雨量も豊富で土壌には十分水分があるのですが、梅雨を過ぎれば例年猛暑が待っています。
ここ最近の夏の暑さは異常で、気温の高さもさることながら、1週間以上も雨が降らない日照りの時期も珍しくありません。
あまりに日照りが続き水分が少ないとナスの実にも水分が行き届かず、固くて美味しくないナスしか収穫できなくなってしまいます。
ナスをつくる場合はこうして害虫のみならず、雨量に気を配らねばならず、乾燥が続くなら頻繁に水遣りをする必要があります。
栽培期間も結構長いので、毎日毎日水遣りを欠かせないといった事もありえるのです。
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