種か苗かどちらで育てる
家庭菜園で野菜をつくるには種からつくるのかそれとも苗からつくるのか迷う時があります。
この野菜は種から育てた方が良いのか苗を購入して育てた方が良いのか悩む事があるのです。
特に家庭菜園を始めたばかりの初心者にはこれはなかなか大きな問題です。
種か苗かの選択は様々な要因で決定されますが、野菜の種類によってはそもそも選択できないこともあります。
つまり、野菜によっては種からしか育てられないものもあるし、苗からしか育てられないものもあるというわけです。
例えば、大根、牛蒡(ゴボウ)や人参などの根菜類は基本的に種からしか育てられません。
種苗店やホームセンターではあらゆる種や苗が売られていますが、どこの店でも大根、牛蒡や人参の苗はまず売られていません。
それは大根、牛蒡や人参の根は傷ついたり折れても新たな根は伸びて来ない直根性と呼ばれる性質のため、苗にしても植え替えがきかないのです。
ですから、大根、牛蒡や人参は種を購入して種から育てるのが一般的です。
また、ほうれん草や小松菜といった葉物野菜も種から育てます。
これらの葉物野菜は苗が売られていることもあるのですが、根が細くて短くて弱いためあまり植え替えに向きません。
一方、種まきして育てる事はできますが、苗を購入して植え付けて育てた方が良い野菜もあります。
ピーマン、トマト、ナスなどは種から育てるのは難しく、苗から育てた方が無難です。
例えば、ピーマンは3月~4月頃が種まきの時期ですが、発芽適温は20~30℃と高く、温度・湿度の管理が非常に大変です。
種まきから定植までの期間も70~80日と長期間に渡り、専用の育苗器でも用意しなければ発芽の温度を維持するだけでも困難です。
プロの農家でも苦労する種まきからの育苗をするよりは、市販の立派な苗を購入した方がはるかに簡単です。
トマトやナスも同様に種まきからの栽培は難しく、これらの野菜は素直に園芸店やホームセンターなどで苗を購入した方が良いと思います。
三種類の種まき方法
①条まき(すじまき)・・・鍬や棒などで畝に筋又は線を作ってその筋(線)状に種をまいていく方法。ほうれん草、小松菜、水菜、油菜などの葉物野菜やミニニンジンなどの根菜類に向いています。
②点まき・・・地表又は畝に一定の間隔で穴をあけて中に種をまいていく方法。穴の大きさや深さは種の大きさや数によります。トウモロコシ、ダイコン、ハクサイ、枝豆、エンドウ、インゲンなどに向いています。
③バラまき・・・地面又は畝に均一に全体的に種をまく方法。ほうれん草、春菊、はつか大根、玉ねぎ、人参、ネギなどの野菜に向いています。
種をまくときの注意点
- 種にはそれぞれ発芽適温があるので袋の裏面などに表示されている種まきの適期を守りましょう。寒冷地、温暖地など栽培地域に合った時期に種まきをしますが、どうしても時期をずれてしまう場合は芽出しをしたり、ポットやトレイで発芽環境を整えたり、マルチングやトンネルを活用するなどあらゆる方法を検討しましょう。
- 種をまいたら水を切らさない様にする。種が発芽するには温度だけでなく水分は欠かせません。
- 水やりで種が流れない様に注意する。水やりをバケツで行う事はないでしょうが、ジョウロで水やりをする場合でも気をつけないと種や土が流れてしまう事もあります。ハス口が緩んでいないかジョウロの本体部分にしっかりと差し込み、ハス口を上向きにしてゆっくりと優しく水が流れ出るようにしましょう。
種の有効期限と発芽率
種が入っている袋の裏面には有効期限と発芽率が記載されています。
これは一言でいえば種の寿命で、発芽能力を維持できる期間を指しており、有効期限内であれば記載された発芽率が期待できるという意味です。
例えば、あるトウモロコシの種の袋には有効期限11年10月、発芽率80%以上と記載されていますが、これは未開封の状態で2011年10月までなら100粒中80粒以上は発芽する確率があるという事です。
通常この値は未開封で常温保存の場合なので、開封してしまえば条件は変わります。
種は生鮮食料品でもなく常温保存が可能で場所も取らないので販売もしやすく、種苗店やホームセンターだけでなくスーパーなどでも売られています。
家庭菜園でも買い置きしておいても邪魔にならないし、作る量も限られるので、使いきれなかった種が残ってしまう事が多々あります。
使いきれなかったといって残しておいても次のシーズンには有効期限を過ぎていたという場合があって、また新しい種を購入すると使い残した種がどんどん溜まっていくことはよくあるものです。
期限が来たからすぐ廃棄といえば簡単ですが、やはり残った種は勿体ないと思ってしまいます。
そうして古い種が溜まった状態を見て、何とか無駄にしない方法はないものかと考えてしまいます。
種の保存方法
種を保存するには種の寿命をできる限り伸ばしてあげる事が重要です。
ただ取って置くだけなら何の問題もありませんが、種を保存するというのは種の発芽能力を維持し続けながらとっておく事に他なりません。
発芽能力を維持しながら保存するには種の発芽能力を低下させる要素を可能な限り排除する必要があります。
種の発芽能力を低下させてしまう要素とは光、酸素、水分と温度ですが、これらは逆に種が発芽する為の条件にもなります。
種はこれらの諸条件が揃えば発芽し始めるのですが、光は必ずではないにしても、他の三条件の一つでも欠ければ発芽に至りません。
すなわち、種が発芽するには酸素と水分があって発芽に適切な温度が必要なのです。
ですから、光を含むこれらの要素の一部又は全部が満たされるようならば、種は保存状態を脱して発芽の為の活動を始めてしまうのです。
種を発芽させずに発芽能力を維持しながら保存するには、酸素を遮断して密封し、湿気を排除して乾燥状態にし、発芽適温にならないよう低温状態にして、光を遮断する袋に入れておくことが必要です。
具体的には種袋のままビニール袋などを密閉して空気を抜き、中には湿気を吸収する乾燥材を入れ、冷蔵庫の野菜室に入れておくのが良いでしょう。
乾燥材は定期的に交換して湿気が残らない様にします。
冷蔵庫に入れておくのが無理という場合は密閉して乾燥材を入れた袋を缶などに入れて冷暗所に置いておくのが良いでしょう。
好光性種子と嫌光性種子
種には好光性種子、嫌光性種子とその中間の種子があります。
好光性種子とはその名の通り光を好む種子で、種が光を感じる事で発芽が促進されます。
好光性種子は種の大きさが小さいものが多く、地中深く播いてしまうと種が持つ発芽のエネルギーが足りずに地上に発芽できなくなります。
ですから、好光性種子の場合は全く土を被せないかもしくは種がほぼ剝き出しの様な状態で種が飛ばず乾燥しない程度に薄く覆土する位が丁度良くなります。
極端な話では種をまく穴をあけずにそのまま播いて、その上からパラパラと土を振る位で十分です。
一方、嫌光性種子は光を嫌う種子で、種が光を感じると発芽が抑制されます。嫌光性種子は種が大きいものが多く、光が当たらない様に種の穴をあけたり溝を作ったりして十分に土を被せる事で発芽しやすくなります。
深さにしてみれば1㎝以上は必要ですが、種の種類や大きさによって異なり、通常種の大きさの2~3倍の深さに播いて覆土するのが目安です。
- 好光性種子・・・インゲン、シソ、セロリ、人参、春菊、小松菜、ミツバ、レタス、イチゴ、バジル、パセリ、カブ
- 嫌光性種子・・・大根、ネギ、玉ねぎ、ニラ、カボチャ、スイカ、トマト、ナス、キュウリ、白瓜、マクワウリ、ピーマン、メロン、大豆、唐辛子
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